『ヒーリングっど♥プリキュア』が全何話になるのか、いつまで放送されるのかについて多くの方が様々な観点から予測をしておられます。
私の方でも現在の状況を整理しつつ、製作現場のスケジュールや過去の実績に照らしながら予測を立ててみました。
そもそも本来、『ヒーリングっど♥プリキュア』は全何話だったのか?
歴代プリキュアシリーズは、概ね「全49話」になりやすい傾向があります。これは1年間に日曜日が52回あり、うち「全米オープンゴルフ」「全日本大学駅伝」「年末年始」による3回の放送休止を挟んで全49話となる年が多いことによります。ゴルフ中継を早めに打ち切ってプリキュアを放送するかわりに夏特番で休止が入ったと思われる年度もあります。
一方で第1話が2月1日に放送されるシリーズは翌年の1月31日まで53回の日曜日があり、全50話になりやすい傾向があります。2009年度『フレッシュプリキュア!』と2015年度『Go! プリンセスプリキュア』がこれに該当します。
またうるう年であれば2月2日始まりであっても1月31日終わりになるため、オリンピック特番さえなければ全50話の可能性があります。今年2020年は2月2日が日曜日で、『プリキュア』シリーズ放送開始以来初めてこのケースに該当しました。
ただし、今年予定されていたオリンピックは東京大会でした。したがってテレビ朝日も他局同様オリンピックには並々ならぬ力を入れており、オリンピックで3週フルに放送休止を挟んでいたと考えられます。
また8月24日に発売された「月刊ザテレビジョン 首都圏版 2020年10月号」から、コロナ禍で延期となった全米オープンゴルフの日曜日中継は6月21日から9月20日に変更され、8:00で終了することが判明しています。つまりコロナ禍にかかわらず、『ヒーリングっど♥プリキュア』の放送において全米オープンゴルフ中継の影響はなかったことになります。
その一方、全日本大学駅伝は現時点で例年通りの11月第1週開催が見込まれています。
以上の観点から、ここでは『ヒーリングっど♥プリキュア』を当初「全48話」(53週-オリンピック3週-駅伝1週-年始1週)シリーズであったと仮定して議論を進めます。
緊急事態宣言前に何がどこまで作られていたのか?
3月24日には国際オリンピック委員会によって東京オリンピックの延期が発表され、そして4月7日には日本政府から緊急事態宣言が発出されました。これらにより、『ヒーリングっど♥プリキュア』の放送予定は大きく変わりました。
さて、緊急事態宣言が発出された4月7日時点で、一体『ヒーリングっど♥プリキュア』の製作はどこまで進んでいたのでしょうか。
まず、これまでに各種の資料から判明している過去の実績をもとに緊急事態宣言前の製作状況を推測してみました。実際のスケジュールとは異なる可能性があることにご留意ください。
- アフレコ
放送に対して1ヶ月程度先行していることから、4月7日時点で第13~14話あたり、当初の予定では5月初旬、実際には7月初旬に放送された話数まで収録が完了していたと考えられます。
また放送後に流れる予告については放送される次の回のアフレコ、すなわち当該話数の2話前の本線録りとあわせて録られているため。14~15話で流れる15~16話の予告まで収録が完了していたと考えられます。
- 絵コンテ
スケジュールや演出家さんにもよりますが、大体コンテ決定稿のUPは放送に対して2~3ヶ月程度先行しています。したがって4月7日時点では第19~22話あたり、当初の予定では6月、実際には8月に放送された話数までコンテ決定稿がUPしていたと考えられます。
- シナリオ
概ね、シナリオ決定稿UPは放送に大して5~6ヶ月程度先行しています。放送日程がオリンピック休止を挟むため時期を読みにくい面はありますが、4月7日時点では第29~32話あたり、当初は9月半ば、実際には10月後半~11月前半に放送される予定の話数までシナリオ決定稿がUPしていたと考えられます。
さらにシナリオ作業INも考慮すると、秋映画公開から駅伝休止のあたり、すなわち第4クール直前まで仕掛かっていたと考えられます。
どのあたりまでやり直しができたのか?
TVアニメーション製作は莫大な予算と長い期間と多数の人員によるプロジェクトで、そうそう簡単に計画を変えられる性質のものではありません。
原則として、既に出来上がってしまった成果物を破棄する、既にスケジュールを押さえてしまった人員を解散させるといった対応は取れないようです。
すなわち、シナリオ決定稿が完成した時点で話数を足したり引いたりすることが不可能となります。したがって8月29日現在までに放送済みの第21話までの話数は、物語の大筋ではまだ緊急事態宣言による放送延期の影響を受けていないと考えられます。
キュアアースが当初6月7日放送予定の第19話で登場、6月14日放送予定の第20話で変身したのも、中止となった「東京おもちゃショー2020」(6月11~14日開催予定)にあわせて去年から、あるいは一昨年からとっくに決まっていたことだと考えられます。
これは近年の傾向、キュアコスモ(6月23日放送第20話)やキュアマシェリ&キュアアムール(6月17日放送第20話)と比較しても「早すぎる」とは全く言えないものです。したがって、コロナ禍によって話数が削られキュアアース登場が早まったというのは、まずありえません。
上記のような製作スケジュールを踏まえて整理すると、緊急事態宣言を受けてリカバリができた話数は、
- エピソード内での台詞回しなどが調整できたのは第22話あたり以降
- エピソード内でのシナリオの大筋が調整できたのは第32話あたり以降
- シリーズ全体の構成や物語が調整できたのは第36話あたり以降
と考えられます。話数と季節感のミスマッチは、今後もしばらく続くことになりそうです。
ヒープリは最終的にどうなるのか?
ここまでの状況を踏まえて、『ヒーリングっど♥プリキュア』の最終的な総話数と放送時期について、よく噂されている2つのパターンを検証します。
なお直近の社会情勢から、国や都から前回のような緊急事態宣言などの対応は今後なされないものと仮定しています。
- 4月始まりに移行(全50話、最終回2021年3月28日)
9週間の放送延期をリカバリせず、“第18シリーズ”以降の放送開始時期をこのまま変えてしまうパターンです。『ヒーリングっど♥プリキュア』予定話数は完走できますが、それどころかオリンピックによる休止がなかった分、むしろ逆に放送枠を2週分持て余します(オリンピックは3週分と仮定していますが、カレンダーの都合で日曜日の数は変わっています)。その分はスーパー戦隊シリーズの『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』から『騎士竜戦隊リュウソウジャー』への移行のように、クロスオーバーのTVSPなどを期待したいところです。
また「2021年制作決定」と発表されている『映画ヒーリングっど♥プリキュア』が従来の春映画と同じ「3月第3土曜日」公開であると仮定した場合は、TVシリーズの放送中、つまりメインターゲットの興味がまだ現行シリーズに向いているうちに単作映画を公開できることになります。
しかし友人のkasumiさんが「ねとらぼ」連載で指摘するとおり、このパターンは完全にメインスポンサーであるBANDAIの展開戦略に重大な支障を来すものです。
新プリキュア「キュアアース」登場も、プリキュアの玩具の売れ行きが不調だった理由 – ねとらぼ
プリキュアにおいてアニメチームと玩具チームは、車の両輪のようなものです。どちらか一方を蔑ろにして作品を成立させることはできません。したがって、このパターンはありえないと言い切れるでしょう。
- 2月始まりを堅持(全42話、最終回2021年1月31日)
TVシリーズにおける全ての影響を『ヒーリングっど♥プリキュア』で引き受け、“第18シリーズ”に影響を残さず例年通り2021年2月7日放送開始とするパターンです。
しかし上記で説明した制作スケジュールに照らして考えると、これは終盤の残り12話分、すなわち第4クール、11月12月1月の3ヶ月分の展開を突如として6話分、1ヶ月半分に縮めることを意味します。
映画前後の盛り上がりから最終パワーアップ、各キャラのラスト当番回、そして年末年始から終盤への怒濤の流れ。これらを半分に詰めてしまうのは、相当に乱暴なことです。これは歴代の各シリーズのエピソード一覧に当てはめてみると、すぐにおわかりいただけると思います。
したがって、このパターンはビジネス上は不可能とまでは言い切れませんが、長い時間をかけて準備をしてきたスタッフにとって非常に不本意な形で『ヒーリングっど♥プリキュア』が幕を下ろすことになります。
プリキュアを信じろ
これまでプリキュアを作ってきた関係各社のスタッフ達は、本当にプリキュア愛が深い人達です。アニメ企画製作営業、玩具企画開発、商品企画開発、各社宣伝、マーベラス音楽&ライブ、マーベラス円盤、イベント、ミュージカル、キャラショー…。たくさんの人々が、プリキュアを世界中のファンに楽しんでもらうため、自分の仕事に誇りを持って一生懸命に取り組んでいます。
なので、きっとアニメ製作サイドと玩具サイド、お互いの異なる事情を摺り合わせつつ、「ほどよい」妥協点を探っていくものと信じています。
というわけで、どちらでもない第3のパターンを考えてみました。
- 3月始まり(全46話、最終回2021年2月28日)
2月放送の4話分の放送枠を『ヒーリングっど♥プリキュア』に追加で割り当て、今後まだ十分に調整が可能な“第18シリーズ”に先輩が受けた影響を一緒に受け止めてもらうパターンです。
この場合、製作上は最終クール12話分を2ヶ月半10話分でまとめ直すだけでよく、ちょっとしたキーイベントや日常回の組み直し程度で十分に対応可能と考えられます。
またメインスポンサーであるBANDAIの展開戦略上も、多少の出遅れは含みつつ、3月序盤を工夫すれば何とか乗り切れそうに思えます。
さらに『映画ヒーリングっど♥プリキュア』を従来の春映画と同じ「3月第3土曜日」公開と仮定した場合でも、メインターゲットのお子さん達はヒープリ熱をワンチャン残していてくれそうです。
というわけで、私の予測としては『ヒーリングっど♥プリキュア』総話数を「全46話」、最終回を「2月28日」としておきます。
もちろん、必ずしもぴったり月ごとに区切られるとは限りません。プリキュア以前のABCニチアサ8:30シリーズでは、『はーいステップジュン』(1985年3月10日開始)、『メイプルタウン物語』(1986年1月19日開始)、『新メイプルタウン物語 パームタウン編』(1987年1月18日開始)など、月の真ん中で番組が変わるケースも多数ありました。
まして同じプリキュア同士、どこか「ほどよい」段階でシリーズが代替わりしても何ら不思議はありません。
この件についての最終的な答え合わせは、おそらく4ヶ月後の12月26日頃の早朝に来ると思われる“第18シリーズ”のビジュアル&キャスト&スタッフ解禁時になると思います。この時点で“第18シリーズ”の放送開始日が判明しますので、自動的に『ヒーリングっど♥プリキュア』最終回放送日も確定するというわけです。
『ヒーリングっど♥プリキュア』も、まだ見ぬ後輩も、どちらも犠牲にしない方法が、きっとある。私はそう信じています。
(2020/12/26追記)
『トロピカル〜ジュ!プリキュア』の放送開始日が「2月28日」と発表され、『ヒーリングっど♥プリキュア』は2月21日までの全45話と確定しました。
それはそうと、ヒープリCDまだまだ出ます
さて、9月9日(水)には『ヒーリングっど♥プリキュア』後期エンディング主題歌「エビバディ☆ヒーリングッデイ!」のシングルCDが発売となります。既に発売されているアルバムやキャラクターシングルとあわせて、中止となってしまった「ヒーリングっど♥プリキュアLIVE2020」に思いを馳せてみましょう。
また10月28日(水)には『映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日』関連CDも発売されます。こちらもお早めの予約をおすすめします。