6月26日、なかのZEROホールにて“プリキュアの父”・鷲尾天プロデューサーを講師に招いた中野区男女共同参画週間上映&講演会「『プリキュア』を生み出したプロデューサーから聞く『アニメーションと多様性』」が開催されました。
こちらのイベント、なんと募集初日にわずか数時間で定員50名が埋まるという注目度の高さ。鷲尾さんは、いつもながらの軽妙な語り口と熱いハートで、プリキュアを通じて今回のテーマにもなっている男女共同参画社会について大いに語ってくださいました。
今回は、こちらの講演会に参加したレポをお届けします。泣き笑いしながらメモを取ってましたので、ミスってたらごめんなさい。
そもそも何のイベント?
今回の講演会は中野区企画部企画課平和・人権・男女共同参画係が主催する、「男女共同参画週間」の関連イベントです。
かなり大雑把に言えば、「性別」によって「できること・できないこと」を決めつけるのをやめよう、ということです。これは、プリキュアシリーズが開始当初から根幹としてきた理念の一つでもあります。
酒井区長降臨
今回は酒井直人中野区長も臨席されました。区長の娘さんがプリキュアファンということで、車の中でプリキュアソングをたくさん聞いて覚えてしまったエピソードなども披露してくださいました。
ジェンダーギャップ克服における中野区の最近の取り組みとして、防災備蓄用の生理用品の無償配布などの例も紹介されました。
防災備蓄用の生理用品をお渡しします | 中野区公式ホームページ
プリキュアの歩んできた道
そして鷲尾プロデューサー登場。
本当はこの講演会は去年に中野区からお話が来ていたところ、コロナ禍の影響で中止になっていたそうです。今年また講演会を実現させるために奔走した中野区の職員の方々を気遣っておられました。
お話はまず最初に『プリキュア』とは何か、その歩みから。どこかしらで見聞きした歴史ではありますが、あらためて鷲尾さんご本人の口から語られると胸に迫るものがあります。
印象的だったのは、「こんなに長く続くなんて、私も思っていなかった。」というお言葉でした。『トロピカル〜ジュ!プリキュア』で、18年目。「ここまで来られたのはひとえにみなさまの応援のおかげです。」とファンへの感謝の言葉も。
やりたいことやっちゃえ
2003年に会社から8:30枠で女児向け作品を作るように(オリジナルでかまわない)との命を受けて企画を立ち上げた当初は、鷲尾さんご自身、女児向け作品に関しては知見がなかったとのことでした。結果「わかんないから、やりたいことやっちゃえ!」と、ご自身の好きな変身アクションものをやることに。
謝ってから逃げればいいんだ
そして『DRAGON BALL Z』などで知られる西尾大介監督が参加されます。当時、西尾監督は鷲尾さんに「1年で終わっちゃうかも知れないけど、その時はゴメンなさいと謝って逃げよう。」とおっしゃったとのこと。それを聞いた鷲尾さんは「ああ、謝ってから逃げればいいんだ。(謝らずに逃げればいいのに)律儀な人だな。」と思ったと冗談めかして語っておられました。
王子様が助けにくるのはやめよう
プリキュアを始めるにあたって鷲尾さんと西尾監督が取り決めたことの一つが「王子様が助けに来るのはやめよう」ということ。困難を自分で解決し、困難に対して自分の意志で立ち向かう。そんな主人公を作りたい、と。それには友達が、仲間がいた方がいい、ということでバディもの、「ふたり」と決まったとのことです。
「女の子だって暴れたい!」秘話
当時の企画書にも謳われ、またプレスリリースのタイトルも飾った名句「女の子だって暴れたい!」。鷲尾さんはこの言葉が「独り歩きしている」とはにかみながら、当時のことを語ってくださいました。
小学生の頃などはむしろ女の子の方が成長が早く、足も速く運動もできたりする。それなのに「女の子だからおしとやかにしなさい」というのでは不満もあるだろう、ということで「男の子らしく」「女の子らしく」を廃した作品を世に送り出した、とのことでした。
しかし当時は、この観点からは今ほど注目はされなかったそうです。
『ふたりはプリキュア』第1話上映
ここで、『ふたりはプリキュア』第1話が上映されました。
もう、このエピソードは何度も見ています。ただ鷲尾さんと一緒に見るのは多分初めてのことだと思います。
こういった場で見ると、時代を感じる点、時代を超えている点、いろいろなことに改めて気付かされます。
YouTubeに無期限で公開されていますので、未見の方はぜひ一度ご覧ください。
【公式】ふたりはプリキュア 第1話「私たちが変身!? ありえない!」 – YouTube
カウンターとしてのプリキュア
この第1話では「2人とも変身するメポ!」「…変身?」「そのギャグ笑えないって」というやり取りに始まり、自分で口走った変身や名乗りの口上に自分で逐一ツッコミを入れるなぎさの姿が印象的です。
鷲尾さんによれば、これは「(当時あった変身ものへのステレオタイプに対する)カウンター」とのことでした。西尾監督曰く、「(いきなりこんな出来事が自分の身に起こったら)ふつうの女の子は思うよね。」と。鷲尾さんは、西尾監督とはそういったリアリティや感情をとても重んじる人だとおっしゃっています。主人公も敵もとにかくみんなが必死で、とにかく一生懸命であること。そこに初めて感情移入できるのだ、と。
男の子だって視聴したい!
そういった丁寧なアニメーション作りが功を奏したか、『ふたりはプリキュア』は大ヒットを飛ばしました。4~6歳女子のターゲット視聴率は最高58.0%をマークし、4~6歳男子にも42.7%という記録。鷲尾さんによれば40%以上で「だいたいみんなが知ってる」ラインだそうです。そう、男の子だって見てたんです。
「カードをスラッシュするメポ」(CV:鷲尾 天)
変身アイテム「カードコミューン」の描写にも大変気を配られていて、本編中ではそのアイテムをどのように使用するかのみならず、別売りケース「コミューンキャリー」にどのようにカードを収納するかまで描写が行き届いています。鷲尾さんは「カードをスラッシュするメポ!」「プリキュアカードを入れるメポ!」と関智一さん演じるメップルのモノマネを披露しつつ、そう説明してくださいました。
カードコミューン発売から2週間ほど経ったある日。鷲尾さんのもとに、バンダイの担当者さんから一本の電話が入ります。開口一番に「申し訳ありません」と言われ、何かやらかしたかとオロオロしていたら「欠品してます」とのこと。
一年間ほぼずっと、作っても作っても欠品していたんだそうです。売り場では電話で情報を共有しカードコミューン確保に奔走するお母様方の姿などもあったそうです。
最終的に、このカードコミューンは60万個を超える大ヒットとなります。
大人が気付き始めた2年目
大好評のプリキュアシリーズは、続編となる2年目『ふたりはプリキュアMaxHeart』に突入します。この頃になると大人達が子供達の間で大人気を博しているプリキュアの存在にようやく気づき始め、会社の上層部にもそれが伝わっていったそうです。
この年、プリキュアは4~6歳女子のターゲット視聴率62.5%という驚異的な記録を残しています。
大きな博打、Splash☆Star
ここで、プリキュアは大きな賭けに出ます。プリキュアというタイトルを残し、基本的なフォーマットを踏襲しつつも、キャラクターを総入れ替えしたのです。
これについて鷲尾さんは、もともと『仮面ライダー』や『スーパー戦隊シリーズ』では当たり前だったスタイルであったと言います。東映動画の女児向け作品でその先例がなかったのは、ひとえに『魔法使いサリー』『魔女っ子メグちゃん』など「主人公の名前がタイトルだったから変えられなかった」からだと説明されています。その点、プリキュアは変身後の総称にすぎないので変更が可能であったということです。
しかし『Splash☆Star』は残念ながら、商品展開や視聴率などで前2作には及びませんでした。これについて鷲尾さんは慎重に言葉を選びながら、また『Splash☆Star』については「お話もキャラも大好き」であると心強く頼もしい前置きをされた上で、「こうなった原因は、同じ形式を踏襲すれば行けると思った自分の慢心、甘え」であると述懐されていました。
またプリキュアのメインターゲット層が他コンテンツへと流れていく様を目の当たりにし、「こうやってキャラクターの流行は移り変わっていくのか」と思い知ったそうです。
当初は2年やる予定だった
『Splash☆Star』シリーズは当初、初代シリーズと同じく2年間を予定していたそうです。満と薫についても、「明言はしない」と釘を刺しつつも「あるいはプリキュアになっていたかも?」とのことでした。
ある時、関係者一同の集まった席で「もう1年やりますか? キャラを変えますか?」と話し合いを持ったそうです。
「もう一回変えてダメなら、プリキュアのタイトルは閉じる。」
そう決心して、鷲尾さんはさらなる博打へと打って出ました。
ふたりって言うてたやん!
そんな状況で立ち上がったのが、『Yes! プリキュア5』でした。突如としてプリキュアが5人になって「ふたりって言うてたやん!」という総ツッコミを喰らったことに対し、鷲尾さんはプロデューサーとしてのお立場から「無印で2人、MHで3人、S☆Sで(満薫いれて)4人とくれば5人になるのは至極当然の流れである」という当時の企画書の“方便”を説明されていました。
このシリーズで、キャラクターデザインは稲上晃さんから川村敏江さんにバトンタッチします。鷲尾さんは当時の業界にあった「偏見」であると前置きしつつ、「女性はアクション作画を苦手とするという風潮」があったことに言及されました。「それでも構わない、変えさせてください。」と食い下がり、川村さんの起用へと繋がります。
鷲尾さんが語る川村さんの印象として、稲上さんは妖精キャラクターの可愛さに対して、川村さんは衣裳のなびきといった表現に強みを見出したとおっしゃっています。
結果、この大博打は功を奏し『Yes! プリキュア5』は4~6歳女子のターゲット視聴率で62%という完全復活の「V字回復」を成し遂げます。
この「V字回復」という言葉に対する鷲尾さんの「S☆S谷かよ!」「谷って言うな!」というツッコミに、大きな愛を感じました。
諸行無常、児童向け作品戦国時代
人気を博した『Yes! プリキュア5』も2年シリーズとなりますが、この頃になると『Splash☆Star』の頃にプリキュアを苦戦させたコンテンツがクローズするなどし、鷲尾さんはそのことに「驚いた」と率直な感想を述べられています。
あれだけ自分達が苦戦した競合タイトルが、わずか3年で閉じる。「正直怖かった」「自分たちも気を付けなければ」と振り返っておられました。
鷲尾さんがTVからも映画からも担当プロデューサーから離れていた期間にプリキュアが直面した競合タイトルについても、率直に語ってくださいました。
「いちばん大切なものって、なぁに?」
そんな中にあって、プリキュアは何を一番大切にしていけばいいのか。
『Yes! プリキュア5』で鷲尾さんが辿り着いた答は、「リーダーのいない、平等なチーム」。5人それぞれが学年の違いはあれど対等で、大切な仲間。その対比として、敵組織ナイトメアは徹底した上意下達の組織として描かれ、その中には実社会のどす黒い描写もリアリティを持って組み込まれています。
つよく、やさしく、美しく。
2015年『Go! プリンセスプリキュア』で、鷲尾さんはプリキュアというタイトルの総責任者という立場で再び作品に帰ってきます。同作誕生の経緯について、鷲尾さんは包み隠さずあっけらかんと「前の年に『アナ雪』が流行ったから。世の中そんなものです。(笑)」と語ってくださいました。
「プリキュアでありながらプリンセスって何?」という問いに対して、「つよく、やさしく、美しく」の「つよく」とは決してパワーのことではなく、気持ちを強く持つということだと、またプリンセスとは決して階級社会のそれではないことを説明してくださいました。そうであるならば、プリンセスであってもプリキュアだ、と。
ゴープリは大きく売上や視聴率には結びつきませんでしたが、「視聴者が戻ってきた」感触を得たとのことです。
魔法のことば「キュアップ・ラパパ!」でふたつの世界がいまつながる!
翌2016年には『魔法つかいプリキュア!』がスタートします。
かつて鷲尾さんは「プリキュアの力とは魔法ではない」と各種の取材で答えていらっしゃいました。そんなかつての自分にかけられてしまった縛りに挑むべく、「魔法使いとは、魔女とは何か」を探究するべく文献調査をしたそうです。
鷲尾さんが調べたところでは、「魔女」とは当時市井の人々の尊敬を集めていた人々。助産師であったり医師(薬師)であったり、命を救う職業が多く、それは女性が多かったとのこと。そして、それは権力者にとって都合が悪いため、魔女裁判などの形で差別を受ける歴史が続いていたと。
差別によって排除された者達の世界と排除した者達の世界。ふたつの世界をつなぐと奇跡が起こせる。それがプリキュア。そうであるならば、「魔法つかい+プリキュア」は成立する…。
こうして『魔法つかいプリキュア!』は誕生しました。
今、一番大事なことをやる!
そして『プリアラ』『HUG』『スタプリ』『ヒープリ』と順を追って紹介し、ついにお話は放送中の『トロピカル〜ジュ!プリキュア』に至ります。
当初機材トラブルで番宣PVの音声が出ず、「音が出ないと『今、一番大事なことをやってこなかった』って(トロプリ担当・村瀬亜季)プロデューサーに怒られる…」と鷲尾さんが慌てる一幕もありましたが、無事に上映。トロプリのメイクとは「誰か他人に見せるためではなく、自分の気持ちを上げるためのものである」、という今年度の根幹もきっちり説明してくださいました。
ここまで18年間、プリキュアは時代によってモチーフを変えながら継続してきたことについて、鷲尾さんは「今、一番大事なことをやる!」というトロプリのテーマに加えて、とある書評から次の言葉を引用されました。
“現在を、たんに将来の目標をかなえる手段として扱わない”
「ふつうに生きるって何?」 いまの愉しさ 自分で見付ける 朝日新聞書評から|好書好日
この言葉は、プリキュアを始めた時のご自身の感覚に最も近いとのことでした。『ふたりはプリキュア』第1話は、なぎさとほのかも、メップルとミップルも、そしてピーサードも、みんなが必死です。そしてそれが、ちゃんと画面に反映されています。
来場者からの質問
Q. 昨年発売の『ふたりはプリキュア』総集編で、いま流れた1話に存在した台詞(「女の子にばっか人気があってもなー」)がカットされている。どのような判断があったのか?
「西尾監督から申し出があった。当時は違和感がなかったが、16年経ってみると違和感がある台詞なので、新規作画はせず次カットの台詞を先行させるなど編集で対応した。西尾監督は(美墨理恵さんが専業主婦としてのみ描写されたことに対して)『なぎさママ、ちゃんと働かせとけばよかった』とも言っていた。」
また西尾監督と言えば『DRAGON BALL』ということで、女子校ガヤを女性の声優陣全員参加で録った際に野沢雅子さんがマイクのかなり後ろにいたにもかかわらずハッキリ集音されてしまい「ダメです、悟空がいます」でNGとなったエピソードや、1話アフレコ後の打ち上げの席で野沢さんが「10年続けましょう」と仰ったというエピソードも披露してくださいました。
Q. 女の子を商業的に可愛いものとして描くのは過度なルッキズムを助長しはしないか?
「プリキュアは当初カウンターカルチャーであったが、メジャータイトルになってしまった。当初と違うパワーバランスに屈したかといえば、そんなことはない。子供達がキャラを『好き!』と思うか、その一点に尽きる。とかく子供達が離れていくとき、その理由はわからない。だから毎年が勝負になる。ルッキズム的な意味での「可愛い」というのは、あくまで大人が抱く感想。そうならないように現場は必死になっている。大人に媚びたとき、子供達はそっぽを向く。『HUGっと!プリキュア』の野乃はなの言葉に『そんなの、私がなりたい野乃はなじゃない!』という言葉がある。見た目がどっちに転ぶかわからないが、大人が見て可愛いか可愛くないかは二の次で、一番守られるべきところが守られているかが大切。」
Q. 私は春日野うららのマネージャー「鷲雄浩太」を、鷲尾さん本人が声を当てていると10年勘違いしていた。プリキュアには勘違いから生まれた設定やエピソードはあるか?
「『鷲雄さん』については、通常プロデューサーに上がってくるはずの設定画が何故か上がってこなかった。いきなりキャラが出来ていて『似てます?』と聞かれた。会話の中には日常生まれたネタをいくつも盛り込んでいる。『ふたりはプリキュア』でポルンがプリキュアを『プリキュラ』と呼び間違えるネタは、社内の会議で進行係から放送開始から半年くらい番組タイトルを『プリキュラ』と間違えられ続けたことに因む。アフレコの際、西尾監督がポルン役の池澤春菜さんにアドリブで指示した。勘違いとは異なるが、『Yes! プリキュア5』ではカワリーノがアラクネアに“黒い紙”(使用するとパワーアップするが自我を失うアイテム)を受け取らせる際、わざと落としてみせて咄嗟に拾わせている。そういった社会人なら誰しも経験しているような場面も、『ファンタジーの世界に入り込むためのリアル』として盛り込んでいる。」
Q. プリキュアになれるのは女の子だけ? プリキュアは女児向け? 子供向け? 全員向け?
「プリキュアとは、自分の足で凜々しく立つ存在。子供達が受け容れてくれれば、スタイルにはこだわらない。時代の要請があれば、プリキュアも変わっていく。アニメを男の子向け、女の子向けと分けなくてすむ時代がいつかくる。」
そして鷲尾さんは、プリティストアにプリキュアコスをした男の子が来店していたというエピソードに触れ、最後にこう結ばれました。
「関係者が納得さえすれば、そんな時代はもう目の前だと思っています。」
「私達の心の中の宇宙は、誰からも自由だわ!」
最後に、『ふたりはプリキュアMaxHeart』第47話Bパートより、ジャアクキングによって滅び行く世界の中で「卒業文集の出し忘れ」や「アサリの買い忘れ」といった何気ない日常の話をしながら勇気と希望を取り戻していくブラックとホワイトのシーンが上映されました。
白「そうよ…自由よ」
黒「えっ?」
白「私達は自由なのよ」
白「たとえどんな状況にあっても、私達の心の中までは、誰も手出しできない」
黒「…!」
白「私達の心の中の宇宙は、誰からも自由だわ!」
黒「うん…そうだね」
鷲尾さんによればこの話数は納品ギリギリで、放送38時間半前、金曜日の18:00までに大阪の朝日放送に納品しなければならないところ、金曜日14:00の時点で当時のTOVIC(東映ラボ・テック赤坂ビデオセンター)でビデオ編集を行っていたとのことです。
これを当時見ていた子供達にはキュアホワイトの言葉は難しかったかも知れないけれど、男女問わず、今頃は社会に出て活躍し始めている頃。自分は見届けられないかも知れないが、そんなプリキュア世代達が社会の中核を担うような時代になれば、こういったプリキュアのメッセージを思い出してくれるかも知れない。世界が変わるかも知れない。
そんな思いを作品に込めたと最後に鷲尾さんは語り、講演会は盛大な拍手のうちにお開きとなりました。
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プリキュアと男女共同参画社会
今回はテーマが男女共同参画社会ということもあり、鷲尾さんは『おしりたんてい』『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』などが女性プロデューサー担当作品であることにも触れ、ご自身が東映アニメーションに入った頃は少なかった女性プロデューサーの活躍が今は増えていることにも言及しておられました。
東映アニメーションといえば、このブログでも、かつてこのようなことを書いています。
メインスタッフが局Pの安井さんを除いて全て女性で占められているのは、特筆すべき点であると思われます。
(8:50追記) これは「女児向けアニメを女性が作っているから素晴らしい」という意味では決してなく、かつて脚本家の故・島田満さんが東映動画第一期研修生採用に首席合格しながら女性であるというだけで演出家への道が開かれなかったという程度には強烈な男社会だった同社が、30年の時を経てメインスタッフがたまたま女性で揃う程度には女性に開かれた職場へと変わった、という意味においてです。これからも性別に関係なく、高い技能と熱い志を持った人達によってプリキュアは作られていくことでしょう。
『ヒーリングっど♥プリキュア』もろもろ発表 | precure.news
これは当時、男女共同参画社会という観点から、特に注意を要すると判断し追記したものです。
というのも、『ヒーリングっど♥プリキュア』のメインスタッフが発表になった当初、それが「女性で固まっている」こと自体を歓迎する向きがあったからです。
当然、東映アニメーションの現場で女性がそれぞれの役職のチーフ級として活躍するようになったのは喜ばしいことですが、「女児向けアニメだから女性が作るのが良い」というのは、それもまた違うわけです。
かつて熱い男達によって男児向けヒーローの系譜を継いで女児向け作品として生まれた、プリキュア。これから少しずつ少しずつ、キャラクターも、作り手も、そしてファンも、性別による垣根を取り払っていくのでしょう。
そんな日がやってくるのを心待ちにしています。