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調査

人は何故『プリキュア』へ還るか

先日、このような記事が公開されました。

なぜ「プリキュア女子」は小学生で離れて中学生で戻るのか(中川 まろみ) | FRaU
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69657

前々から、フォロワーさんの中に「小さい頃にプリキュアを見ていて、中高校生になってから再び戻ってきた」という方が多いとは思っていました。その点では個人的な体感と合致しています。

しかし……

女子が中学生以降にプリキュアに戻るという現象は、社会に横たわる不平等な現実を前にプリキュアが示す先進的な価値観に共感していると解釈できるのではないだろうか。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69657?page=4

という結論には疑問を持ちます。

確かに『プリキュア』シリーズには次の時代を担うお子さん達へのメッセージが込められており、作品を貫く価値観は時代の変化につれて常にアップデートされ続けてきました。しかし、プリキュアの魅力として真っ先に挙がるのがそれか? という思いは拭えません。

また「プリキュア」と「プリキュアでないもの」両者に対する筆者の理解についても、私とは大きく異なるところがあるようです。他作品を不当に貶してプリキュアを持ち上げるというのは、全く公正ではありません。

ならば、実際に調べてみようじゃないの。というわけで、10代の女子に限らず「かつてプリキュアを見ていたが何らかの理由で離れてしまい、また戻ってきた」人達に、その理由を実際に聞いてみました。

1/12 8:00時点で総リプライ340件、有効回答303件もの貴重なご回答を寄せていただきました。

カムバックの要因となったシリーズ

まずは、「どのシリーズがカムバックの要因となったのか」を見てみましょう。ここで注意していただきたいのは、「戻ってきた時期」とは関係なく、あくまで「戻ってくるきっかけとなったシリーズ」であることです。

2018『HUGっと!プリキュア』64
不明51
2017『キラキラ☆プリキュアアラモード』31
2012『スマイルプリキュア!』31
2010『ハートキャッチプリキュア!』29
2019『スター☆トゥインクルプリキュア』17
2016『魔法つかいプリキュア!』16
2015『Go! プリンセスプリキュア』14
2007『Yes! プリキュア5』13
2009『フレッシュプリキュア!』10
2013『ドキドキ!プリキュア』9
2014『ハピネスチャージプリキュア!』7
2011『スイートプリキュア♪』7
2004『ふたりはプリキュア』2
2005『ふたりはプリキュアMaxHeart』1
2008『Yes! プリキュア5GoGo!』1

圧倒的に『HUGっと!プリキュア』が多いようです。「現在『戻ってきている』人の『戻ってきたきっかけ』は近作に集中する傾向にある」という留意点を挙げておきますが、しかしそれだけではないようです。

『HUGっと!プリキュア』は「15周年」という盛大な祭りの中、公式による各種施策とファンの盛り上がりの両輪でプリキュア史に残る大きなムーブメントを築きました。それをきっかけに戻ってきた方も多くいらしたようです。

さらに興味深いのは、2019年のNHK特番「全プリキュア大投票」で上位にあった『ふたりはプリキュア』『Yes! プリキュア5GoGo!』が契機としてほとんど挙げられていないことです。 自分達の好きだったシリーズを見返すというよりは、その時点で放送されているシリーズにいきなり飛び込んだ方が多いようです。

考えてもみれば、同番組は「既にプリキュアを卒業してしまったリアルタイム世代が自分達の好きだったシリーズを懐かしむ」という側面が強かったわけで。カムバックを果たした層はあくまで少数派にすぎないことを痛感させられます。

しかしそれは裏を返せば、「初代」と「5」が大規模カムバックの可能性を秘めているということに他なりません。20周年に向けて大いに期待したいと思います。

カムバックの要因となったできごと、ポイント

続いて、プリキュアに戻ってきた理由をいくつかの類型に当てはめて集計してみます。

あらかじめお断りしておきますが、ここでは「理由」というふんわりした聞き方をしているため、「再接触の発端・経緯」と「再定着の要因」とが混ざっています。その点も含めて個々人が最も寄与度が高いと感じた要素であると解釈し、あえて並列させています。(5件未満は省略)

キャラクターが良かったから53
好きな声優さんが出演するから31
ふと思い立って23
友人の影響で23
SNSでの評判で15
ストーリーが良かったから13
過去のプリキュアが帰ってきたから11
環境が変わったから10
作画が良かったから9
音楽をきっかけに9
家族が見ていたから9
特定のスタッフが携わるから8
シリーズのテーマに惹かれた8
お子さんが見始めたから7
偶然TVシリーズを見た7
動画サイトから7
再放送で見た6
特定回を見てハマった5
不明5
オールスターズメモリーズ5
ネットニュースを見た5
公式配信で5

「キャラクターのビジュアルや個性に惹かれた」という方は多く、この理由だけでシリーズ別に集計するとこんな感じです。

2017『キラキラ☆プリキュアアラモード』15
2018『HUGっと!プリキュア』9
2012『スマイルプリキュア!』8

プリアラ、とくにゆかりさんとあきらさんが強い印象です。また、川村敏江さんちの子達の強さも際立ちます。

また、「好きな声優さんが出演するから」という理由も多いです。

2010『ハートキャッチプリキュア!』8
2017『キラキラ☆プリキュアアラモード』6
2018『HUGっと!プリキュア』6
2013『ドキドキ!プリキュア』3

『ハートキャッチプリキュア!』、というよりも水樹奈々さんが強いです。中には「ラブライブ!サンシャイン!!」の推しキャラの母親役が水樹さんだったことから過去の出演作を見始めたという方もいらっしゃいます。『キラキラ☆プリキュアアラモード』に関しては福原遥さんが4人となっています。

その他「お子さんが成長して一緒に見始めた」という定番の理由のほかに「友人の影響で」「先生の影響で」「SNSでの評判を見て」といった、人間関係の中でプリキュアに戻ってきた人が多いこともわかります。今回の調査では「いつまでもプリキュアを見ているのを友達にからかわれた」という理由で離れる人が多いという哀しい事実も浮き彫りになりましたが、その一方で友達に影響されて戻ってくる人もいるということです。

「過去のプリキュアが帰ってきたから」という理由も目立ちます。これは『ハピネスチャージプリキュア!』における歴代プリキュア10周年挨拶と『HUGっと!プリキュア』における2度にわたるTVシリーズでの客演によります。

『HUGっと!プリキュア』に関していえば、やはりこの年のプリキュア15周年施策によって『ふたりはプリキュア』リアルタイム世代が大量に復帰した模様です。TVシリーズに初代プリキュアが事前告知なしで登場したのをきっかけに戻ってきた方や、『オールスターズメモリーズ』を劇場にみにいって、そのままTVシリーズを見るようになった方もいらっしゃいます。

また『おジャ魔女どれみ』世代が『ハートキャッチプリキュア!』を馬越嘉彦さん目当てで、『Yes! プリキュア5』世代が『HUGっと!プリキュア』を川村敏江さん目当てで見るようになったという回答もありました。このお二人のクレジットを確認して見始めたという証言は多く、成長したリアルタイム世代が何を基準に視聴を判断するかという興味深い事例です。

また「再放送を見て」というきっかけを挙げる方もいて、BS11やTOKYO MXをはじめとする継続的な再放送がプリキュアの裾野を着実に広げていることがうかがえます。また数としてはそれほど多くありませんが、過去作の「YouTube公式チャンネル1話配信」やスタプリの「TVer配信」なども環境や習慣が要因でプリキュアを見られなかった人々が戻ってくるきっかけとなっているようです。

今回の調査ではこうした貴重なデータもさることながら、「プリキュアを好き」という人々の思いがつまった言葉をたくさん寄せていただき、一人のプリキュア好きとしてとても心に響きました。

なお今回の調査では「社会に横たわる不平等な現実を前にプリキュアが示す先進的な価値観に共感」を最大の要因として挙げた回答は、私が読み取る限りではゼロでした。私のフォロワーには、女子中学生はいないのかも知れません。

作成者: 祥太

広島生まれ広島育ちの中野民。同人サークル「SHOWTIME」でプリキュアの音楽研究本やフォント研究本などを作ったり、イベントに出たり、DJやったり。プリキュア関係でのお仕事はCDBOXの選曲協力や原画集の編集作業補佐など。