10/19に公開された『映画スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』。映画としての完成度の高さはもとより、物語の美しさに心を動かされた人がいつになく多く、上映直後より大きな反響を呼んでいます。
公開から日が経ちましたので、本作で重要な役割を果たしている音楽について、映画の内容に触れつつ書いてみます。
TVと映画とを問わず田中裕太監督作品の魅力のひとつに、挿入歌の効果的な使用を挙げることができます。古くは『スマイルプリキュア!』第43話や『ドキドキ!プリキュア』第40話、近年では『映画魔法つかいプリキュア! 奇跡の変身! キュアモフルン!』や『HUGっと!プリキュア』第37話などが該当します。
その使い方には、大きく分けて二つのパターンがあります。一つはバトルシーンを盛り上げる特別な音楽としての使い方。これは『スマイル』43話の「あなたの鏡」や『ゴープリ』39話「プリンセスの条件」、『HUG』37話「DANZEN! ふたりはプリキュア」、『キュアモフルン』「キラメク誓い」がそれに当たります。
もう一つは、キャラクターの感情が高まり心を通わせあうシーンに対する特別な音楽としての使い方。これは『ドキドキ』40話「こころをこめて」、『キュアモフルン』「ふたつのねがい」です。
本作でいえば、「星座のチカラ」が前者、「Twinkle Stars」が後者にあたります。さらに「Twinkle Stars」はゲスト声優も務めた知念里奈さんによるソロ歌唱で本作のラストを飾るエンディング主題歌にもなっています。
そして、今回の映画のために作られた林ゆうきさん・橘麻美さんによる数々の新規劇伴音楽。沖縄、世界中の不思議スポット、そして宇宙。美しい映像で展開される旅にさらなる彩りと説得力を与えてくれます。「聴き慣れない劇伴が流れる」という体験も、映画プリキュアでは重要なポイントとなります。
それらの新曲とともに、観客を『スター☆トゥインクルプリキュア』の世界へと誘うためにTVシリーズから主題歌と劇伴が使用されています。この中には『キラキラ☆プリキュアアラモード』『HUGっと!プリキュア』から引き継いできたストック音楽も含まれています。
これらが全て組み合わさって、本作の音楽を構成しています。それでは本作に使用された全楽曲を、使用順に一つずつ見ていきましょう。
サントラ01. 映画館はワンダーランド
映画プリキュア名物、コミカルなミラクルライト前説のBGMです。これはTVサントラ1に収録された「宇宙はワンダーランド」と同一音源で、作曲は林ゆうきさん。宇宙への憧れ、そして80年代的テクノという『スター☆トゥインクルプリキュア』の世界観が端的に表れた楽曲といえます。
サントラ02. ながれぼしのうた(オルゴール)
超新星爆発によってユーマが誕生する幻想的なシーンのBGM。本作で最も重要なキーとなる「ながれぼしのうた」のメロディをオルゴールが奏でます。
6/2に先行してイメージビジュアルが発表された際、すでにこの曲はページのBGMとしてWeb上で全長が再生されるようになっていました。その頃から聴いて耳に馴染んでいた方も多いと思います。
サントラ03. キラリ☆彡スター☆トゥインクルプリキュア(映画サイズ)
前回の田中裕太作品 『映画魔法つかいプリキュア! 奇跡の変身! キュアモフルン!』 ではTVシリーズを見ていない人に世界観を手短に伝えるため、開幕をバトルシーンにしてOP主題歌を流すという変化球が見られました。
今回もこれを踏襲し、この映画で『スター☆トゥインクルプリキュア』に初めて触れる人に向けてスタプリとは何か、彼女達が何者であるかを台詞と効果音付きで見せていきます。
TVと同じOP主題歌ですが、「2分38秒」という尺の長さは春映画を含む歴代すべてのプリキュア映画の中でも最長となりました。これまでの最長記録であった『ASNS1』『ASNS2』の「プリキュア ~永遠のともだち~」映画サイズコーダ付きよりも、さらに10秒程度長いのです。間奏部分を星空刑事メリー・アン警部補登場のアクセントに上手く当てはめてありました。応援上映での「ムゲンダイマジネーション」大合唱は、圧巻でした。
サントラ04. 逮捕であります!
アン警部補がユニを追い回すシーンのBGM。よく聴くと「ワン!」という犬の鳴き声がサンプリングされていて、遊び心が楽しい曲です。
サントラ05. おなかすいたルン
寝坊してしまい朝ご飯を食べ損ねたひかるとララ。これはTVサントラ1に収録された「ひみつでプルンス」と同一です。TVシリーズでもよく使われる日常曲ですね。こちらの作曲は橘麻美さん。
サントラ06. 不思議なコンペイトウ
ユーマとの初遭遇。ひかるに対して警戒心がやわらぐにつれて、音楽も不穏な始まりから少しずつ暖かいトーンになっていきます。TVシリーズのストック音楽と異なり、展開にあわせて細かく曲調を変えていくことができるのが映画新曲のフィルムスコアリングの特徴です。
サントラ07. めんそーれ沖縄
ユーマのチカラで沖縄にワープしてしまったひかるとララとフワ。沖縄といえば三線(さんしん)が鳴る沖縄民謡をイメージしがちですが、敢えてそうせずにウクレレなどハワイアンなテイストを持ってきたところに面白さを感じます。
サントラ08. 迷い星
ララに怒りを向け、ひかるに窘められてしまったユーマ。思わずその場を逃げ出します。この曲はTVサントラ1「月影メランコリック」と同一です。作曲は橘麻美さん。
(サントラ02. ながれぼしのうた(オルゴール))
お土産物屋さんの店先でユーマが聞き入っている、オルゴール。ここは劇中音として使用されています。
サントラ09. ララ、怒る
ララにとって同じ地球外生命体であるユーマの奔放な行動は危険極まりないものとして映ってしまい、思わず激しい怒りを向けてしまいます。そのララの感情の昂ぶりに対してつけられたBGM。
(未収録 ながれぼしのうた(ララ・アカペラ))
泣かせてしまったユーマをなぐさめるため、うろ覚えの「ながれぼしのうた」をハミングで歌ってみせるララ。
サントラ10. 心にふれてみたら
感情のぶつかり合いを経て、ララと打ち解けたユーマ。オルゴールの音色が取り入れられていることがわかります。
サントラ11. 南国のひととき
沖縄で再会したひかる達が過ごす束の間の時間。 最後は記念写真。 こちらも南国のゆったりとした空気だけを音楽で表現し、敢えて沖縄風の音階や楽器は使われていません。
(サントラ02. ながれぼしのうた(オルゴール))
浜辺でオルゴールに聴き入るユーマ。
(ながれぼしのうた(アカペラ・ひかる))
「ながれぼしのうた」は、この世界では童謡として広く知れ渡っていることになっています。ララの前で歌ってみせるひかる。
サントラ12. 世界の不思議スポットへGO!
これぞ映画音楽の醍醐味、完全に画面にあわせて音楽が展開していく典型的フィルムスコアリングです。自然が作り出した雄大な地形、様々な生き物たち。それにあわせて楽器やコーラスも様々に形を変えていきます。アフリカに降り立つ頃にはNHKスペシャルの大型紀行番組のテーマ曲かと思われるほどスケールの壮大な曲になっています。
サントラ13. 巨大宇宙船の影
『キラキラ☆プリキュアアラモード』よりA40 [不安 じわりと忍び寄る影]を、途中から使用しています。
このように過去のTVシリーズのストック音楽が使える箇所は積極的に使用することで、新曲の数を絞る、すなわち予算や時間などの限られたリソースをより集中的に濃く投入することができるようになるのです。
サントラ14. ハンター襲来
ニトロ星人・バーンのサーチによって気を失って倒れていく観星町の人々。ひかる達はスターカラーペンダントによって守られます。ダークで重々しいテクノ。
サントラ15. スターカラーペンダント!カラーチャージ!(クインテット・ヴァージョン)
颯爽と駆け付けるえれな・まどかにユニ。TVと同じ変身テーマ5人バージョン。今回の映画サントラが初収録となりました。
サントラ16. 強敵・宇宙ハンター
5人のハンター達とのバトル。3分超えの長尺アクション曲です。サントラには記載がありませんが、林ゆうきさん担当曲と思われます。
サントラ17. 宇宙ハンターとの激闘
シャドー星人・ダイブに追い詰められるキュアソレイユ。ここは『HUGっと!プリキュア』より、 HG22 [プリキュア苦戦~やられる~万事休す]が使用されました。本曲の映画での使用は、これが初となります。展開のある長尺曲なので映画でも十分に対応してくれます。
サントラ18. 文句があるなら止めてみな
ユーマの正体がハンター達から明かされます。ピンチに陥ったプリキュア。
シングル03. 星座のチカラ(※本編では劇中サイズ)
劇場版限定、12星座ドレスを纏ったバトルシーンの挿入歌です。メジャーコードの明るい曲調で、これまでの秋映画のバトル挿入歌とは一線を画した使い方です。どちらかといえば、『ASDX』『ASNS』クライマックスでのOP主題歌の使い方に近いと言えます。
歌唱はTVシリーズのエンディング主題歌を歌う吉武千颯さん。 そして作詞・作曲・編曲は、堀本陸さん、馬瀬みさきさんのお二人による作曲家ユニット「Lantan」。直近ではプリキュアのスポンサーでもあるフルタ製菓の2019年新CMを担当されています。
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フルサイズは「1A1B1サビ-2A2B2サビ-Cメロ-大サビ」という構成ですが、サントラに収録されたショートバージョンは「 1A1B1サビ-Cメロ-大サビ 」、一方で映画では 「1A1B1サビ-2A2B2サビ-大サビ」 といういずれとも異なる形で使用されました。
映画では使われなかったCメロもとても良いので、ぜひシングルCDでフルサイズを聴いてみてください。
サントラ20. ララ、切なくて
ユーマを保護しようとするアン警部補。しかし、ララは別れを受け入れられず必死に抗います。不安、焦り、孤独、寂しさ。ララに押し寄せる様々な感情を表現する曲です。
サントラ21. オレは好きにするぜ
手錠を破壊して拘束を逃れ、ユーマを奪取するニトロ星人・バーン 。急迫的な大ピンチの曲です。
サントラ22. 大暴走
ニトロ星人・バーンの強烈な悪意に触れたことで急激な変化を始めたユーマ。巨大化してしまったユーマを追って、他のハンター達も襲ってきます。ここは『キラキラ☆プリキュアアラモード』より、A115 [激突、猛攻 めまぐるしく攻守入れ替わるような激しい戦い]が選曲されています。
サントラ23. 一番大切なのは…
スターと話しながら、一番大切なものに気づいたミルキー。これはTVシリーズのサントラ1「遊星から愛をこめて」と同一楽曲です。春に続いての映画での使用となりました。『スター☆トゥインクルプリキュア』のメインテーマのアレンジの一つで決意の場面などで使われてきたものです。
なお林ゆうきさんが担当した『プリアラ』『はぐプリ』『スタプリ』いずれもサブタイトルはメインテーマの「サビ」をモチーフとしているため、サブタイトルを聴けばその年のメインテーマのモチーフがわかる仕組みです。
サントラ24. 星の中へ
ユーマの星のコアに急行するキュアスターとキュアミルキー。疾走感あふれるリズムに、中盤で変身テーマのメロディが展開されます。ユーマが描いた夢、ユーマの「なりたい自分」を守るため、二人は急ぎます。
(サントラ02. ながれぼしのうた(オルゴール))
雷に打たれて変身が解け、深い水の中に沈んでしまたひかるとララ。遠のく意識の中、ララにかすかに聞こえてくる、「ながれぼしのうた」オルゴール。かなり強いリバーブエフェクトがかかっています。
シングル01. Twinkle Stars
ララとひかるによる「ながれぼしのうた」の独唱から始まり、そこにユーマが応え、歌による対話が始まります。そして「Twinkle Stars」へと繋がり、再びスターとミルキーに変身し、最後はプリキュア5人とユーマでの合唱へ。裏ではユーマが「ながれぼしのうた」を歌ったり、掛け合いパートを担ったりしています。その間にもユーマの星はどんどん、自分の思い描いた姿へと変わっていきます。
その一連の美しいシーンで使用されたのが、今作の予告でも挿入歌「Twinkle Stars」です。後半部分は9/28のスタプリライブでも歌われたほか、10月からはTVシリーズのエンディング主題歌としても使用されています。
サントラにはそのTVサイズが収録されており、本編で実際に使用されたフルサイズは、サントラではなくシングル盤のみに収録されています。
作詞は、 大森祥子さん。『ふたりはプリキュアMaxHeart』の3人キャラソン「Max HeartでGO GO GO!!」をはじめ、『Go! プリンセスプリキュア』OP主題歌「Miracle Go! プリンセスプリキュア」や『キラキラ☆プリキュアアラモード』OP主題歌「SHINE!! キラキラ☆プリキュアアラモード」など多くの歴代プリキュアソングを手がけてこられた他、プリキュア枠の先輩『おジャ魔女どれみ』OP主題歌「おジャ魔女カーニバル!!」でも有名です。
そして作曲は、『ドキドキ!プリキュア』『ハピネスチャージプリキュア!』『Go! プリンセスプリキュア』『魔法つかいプリキュア!』の音楽および歴代プリキュアで数々の歌を手がけてこられた作曲家の高木洋さん。田中監督とは、『ゴープリ』、『キュアモフルン』に続くタッグとなりました。
そのお二人とも何度も一緒に仕事をしたアニメーター・板岡錦さんが原画を担当した作画パートから、幻想的な星の世界を舞台にした3DCGダンスへと展開していく画面に対して、フルにこの挿入歌が付けられています。
なお板岡さんは、かつて田中裕太監督が演出した『ドキドキ!プリキュア』第40話でも、まこぴー・剣崎真琴が「こころをこめて」を歌いながらキュアソードに変身するという印象的なシーンで原画を担当されています。今回の「Twinkle Stars」作画パートは、それを6年越しに発展させた形とも言えるでしょう。
本曲のララの歌い出しからコーダまでの総尺は、実に「6分55秒」という長大曲となりました。
これはプリキュアソングとして「プリキュアオールスターズDXメドレー for 3D theater」の7分31秒に次ぐ歴代2位の尺です。続く現3位は「プリキュアメドレー2013」フルサイズの6分27秒。メドレーを除けば歴代最長となります。
また映画本編挿入歌としても、これまでの最長だった『映画プリキュアオールスターズ みんなで歌う♪奇跡の魔法!』「魔女の子守歌~歌は魔法」の5分23秒を大きく上回るものとなりました。
本音源に関して音響解析を行ったところ、ユーマが呼応して歌ったパートのトラックは純カラオケ音源には含まれていませんでした。すなわち、「ユーマ」は他の楽器ではなく、プリキュア達と同列の「ボーカルトラック」として扱われていることになります。
また、劇中で使用された音源は冒頭30秒がボーカルのみとなっていて、シングル盤収録の音源とはテイクが異なるようです。
なお、純カラオケ音源はDVD付き盤ではなく通常盤のみに収録されています。これは『ドキドキ!プリキュア』以来毎回のことですが、ぜひ両方とも買うことをおすすめします。
サントラ26. 夢をみる星
幻想的な、ララとユーマの別れのシーンのBGM。美しい光景が広がる星の上で、ひかるとララを思わせる姿に成長したユーマが、ララ達の前に現れます。いつか再会することを約束し、そしてユーマは宇宙へと帰っていきます。
サントラ27./シングル02. Twinkle Stars(映画エンディング主題歌version)
挿入歌と同じ「Twinkle Stars」ですが、こちらはアン警部補を演じた知念里奈さんによる歌唱です。高木洋さんが担当してこられた秋映画のラストBGMを思わせる、静かなピアノから入って盛り上がり、そしてまた静かに終わる形式を取っており、とても懐かしさを感じさせます。
今回、エンディング主題歌バージョンの「Twinkle Stars」はこの2分尺の映画サイズのみが製作されたと思われ、全く同一の音源がサントラとシングルCDに収録されています。
さて、映画が公開を迎え、今期の音盤も残すところ『スター☆トゥインクルプリキュア』TVシリーズのサントラ2、そしてボーカルベストのみとなりました。いずれも、既に予約が始まっています。お早めのご予約をおすすめします。
また11/2(土)に、プリキュアおじさん主宰イベントでDJをやります。私のコーナーでは「田中裕太特集」などをやる予定です。何も終始ブースのDJに合わせている必要はなくて、みんなで飲んだり食べたりしながらわいわいおしゃべりできる場所もあります。ぜひ、今回の映画の感想を仲間達と語り合ったりしてみてください。
11月2日(土) 15:00~、中野「アニソンカフェ&バー雷神」さんにて。
すなっくプリキュア
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