今回は、土田豊さん演出回特有のテンポの良さで上手く和らげつつも繊細な話が展開されていました。1999年には存在自体がない未来の少女、明智あんな。忘れ去られ、しかも「妖精には標準で備わっているはずの人間変身能力が生まれながらに欠損している」という(いわば)先天性の生きづらさを持っているのに救いの手が差し伸べられず、自らで生きやすい世界を開拓するしかなかった悲しき敵、ウソノワール。

 暫定ラスボスの目的が例年よりも早く明かされ、主人公との接点も作られた第37話。一気に張り巡らされつつあるあんなとみくるの伏線が、残り14話数でどのように回収されるのか……期待がとても膨らみます。

今週の放送

『名探偵プリキュア!』第37話「ウソノワールとニジーの ティータイム」

「でも、何よりも思ったの……。この時代で、この世界で――独りぼっちなんだって……!」

 これは、今や懐かしい『名探偵プリキュア!』第6話で、キュアアンサーが発したセリフです。そう、表題などにも書いた通り、1999年の明智あんなは本来影も形もないはずの女の子です。突然現れた妖精に連れ去られ、その身一つで前世紀の大昔に来てしまった、戸籍もない孤独な少女なのです。しかも、我々は視聴者なので「彼女はきっともうすぐ元の時代に帰って来られる」とわかっていますが、本人の視点だといつ終わるとも知れない戦い。大人ですら早々に心が折れかねない出来事に、まだまだ小さな14歳の女の子が立ち向かっているのです。

 タイムスリップからとうに半年以上が経過した今、それでも明智あんなが笑っていられるのは、ひとえに――みくるたち大切な仲間が、「キュアット探偵事務所の一員」「名探偵仲間の明智あんな」として存在を認め、安心できる居場所を作ってあげているからでしょう。つまり、明智あんなは本来孤独を強いられる少女でありながら、この世界で生きることを許されていて居場所のある人間なのです。なんなら、未来に帰れさえすれば、港町のタワマンで恵まれた暮らしを再開できます。お母さん含む家族もいるでしょうし、なんなら元の時代での友達もたくさんいることでしょう。

 対して、ウソノワールはどうでしょうか。確かに仲間はいますが、同じく世界に居場所のない忘れられた者同士。居場所なんて用意されていない上に、自分を偽って生きやすくするための能力も生まれながらに欠損している――。彼の抱えている境遇がどちらか一つだけなら、何とか生きられたことでしょう。しかし彼は、彼そのままで生きることが世界から許されなかった。作中でも言及があった通り、それゆえ逆に世界そのものを自分の生きやすい世界に作り変えることしか方法がなかったのでしょう。近頃はマスコット化して癒し枠に収まりつつあったウソノワール様ですが、蓋を開けてみれば、繊細で切実な理由が彼を突き動かしていました。

 彼は、自分と明智あんなが似通った存在だと言いました。嘘を吐く能力が不完全なウソノワールと、信条として正直であることを守っている明智あんな。確かに、彼の言う通りその面では共通点のある者同士なのかもしれません。しかし前述のとおり、明智あんなにはウソノワールと違って確固たる居場所がある。

 明智あんな含めプリキュア陣営はまだそれを上手く言語化できていない様子ですが――だとしても、「悪事に立ち向かって倒して解決する」だけではキュアット解決できない、どうしようもなく溝の深い問題が横たわっていることに、あんなたちは気づいたことでしょう。しかも過去話数の伏線(青レンガ倉庫、取水塔の色、など)からして、今見えていること以上に問題は根深そうです。明智あんなたち名探偵は、どのように見て、感じて、ひとつの「まこと」――あるいは未来を掴み取るのでしょうか。そして次回はどうやら、帆羽くれあの瞳の秘密に迫るようです。大きな伏線の謎解きパートに入りだして楽しいと同時に、たんプリの終わりが近づいてきていることを感じて、寂しくも思いますね……。それでも折角なので、前向きな気持ちで、プリキュアたちと一緒に謎を追っていきましょう! これからもキュアット解決!

スタッフ

役職担当
脚本村山功さん
絵コンテ・演出土田豊さん
作画監督藤原未来夫さん
美術鈴木祥太さん

これからの予定